![]() |
動き出した骨董品オープンリールデッキ TEAC A-6300MkⅡ |
上記画像は修復完了した TEAC A-6300MkⅡ 1977年に製造販売されたオープンリールテープデッキです。製造後40年近なっておりメーカーサービスは受け付けてもらえない機器です。今回完全ジャンク品からの蘇生であり 補修部品入手困難な中での修復作業ですので個人的解釈における修復作業とご理解ください。自己責任による記載事項です。
道楽修復作業で TEAC X-10R 系のテープデッキは多数台修復してきましたがデュアル・キャプスタン構造のメカニズムの欠点が判明しました。テープ走行がシングルキャプスタンに比較して特性がよいとの売り文句でしたが 長時間使用した場合様々な欠点が目につくようになり今回 回転動力源がDCモーターから過去から製造されているACモーター機種を選択しました。当時であれば小遣い銭で多数台のテープデッキは購入できません。現在であれば粗大ごみ扱いの過去に製造された機器が安価に入手できる時代です。補修部品が入手できない・製造メーカーからのサポートが得られないリスクがある中での修復です。現在動態保存しているX-10R は5台所有しています。
X-10R 系の欠点
![]() |
X-10R キャプスタン軸の摩耗 |
![]() |
A-6300MkⅡキャプスタン軸 |
以上の状態変化によりテープ走行不安定が発生し フライホイルを交換しなければ正常なテープデッキとして働くことができません。現在新品のフライホイルは入手できません。この症状に悩まされました。
又TEACのサービス部門からは X-10R 系の補修部品は以前入手できましたが 現在はPSE法などの環境変化から純正部品入手ができません。これらの状態変化により X-10R 系の修復作業は卒業となりました。
TEACサービス部門では現在でも X シリーズであれば修理・調整は受け付けてもらえますので安心してください。しかし A シリーズについては修理受付ですらキャンセルされますので 選択肢として専門修理業者に依頼するしか方法はありません。自力で修復がありますが ある程度の修理技術・経験及び測定機器などを所有していなければ修復は困難です。故障個所の修理だけではほとんどの場合 販売されていた当時の性能は得られないと思います。オーバーホール・総合調整をすることにより初期性能が得られると思います。
X-10R 系デッキは使い勝手は良いのですが使い込んでいくと様々な問題が発覚します。シングルキャプスタンメカニズムではキャプスタン軸が摩耗することはほとんどありません。利便性・メカニズム特性の優秀性を取るか? 長時間安定動作を取るか? は個人の判断にお任せします。
TEAC A-6300MkⅡ の入手
![]() |
A-6300MkⅡ内部構造 |
X-10R 系は卒業しましたので 今回市場で探していたテープデッキは A-6300,A-6300MkⅡです。今更2Tr,38機は使い勝手が悪く 生録音することもありません。A-6100,A-6100MkⅡは選択外としました。使用環境から 4Tr,2Ch オートリバス可能な機能のある機器を選択しました。A-6300.A-6100 のサービスマニュアルは海外サイトから入手しましたが A-6300MkⅡのサービスマニュアルは入手できていない状態での時間のかかる修復作業内容です。元ユーザーが分解途中の完全ジャンク品からの修復作業です。
入手後 目視・通電テストでの不良個所
・ キャプスタンベルト ベトベトでフライホイルに溶着
・ VUメーターランプ右側不点灯
・ 10号NABアダプター欠品
・ サイド木製パネルねじ欠品
・ ピンチローラーの劣化
・ 右側リール台センターぶれ
・ メカニズムの動きがスムーズでない
・ 外観の汚れ・内部の汚れ
・ 各取り付けねじの錆
上記のような状態からの修復作業です。基本的な動作は A-6300 と変わらないとの判断での修復作業です。A-6300 は1974年に製造販売されていますが 内部にはいくつかの変更改良点があり多難な船出となりました。肝心のヘッド摩耗程度は良好でありメカニズムが正常に動き出せは 何とか暇つぶしのお遊びになると判断しました。キャプスタンベルト不良でありアンプ系などはメカニズムが正常にならないと他の不良個所の良否判断できません。修復していく中で不良個所は増加すると思います。
今回初めて経験する機能があります。AUTO SPACER 機能です。PULL ON で動作するつまみです。修復が完了した時点で検証しますが XシリーズのREC MUT 機能かもしれません。表示内容から自動スペース機能(無音録音)と思います。取扱説明書が入手できていませんので現在不明な機能です。
以前修復したX-10R 系は合計10台近くあり 部品移植用として2台が修復の犠牲となっています。このX-10Rは製造販売が1979年でありA-6300MkⅡの製造時期を比較すると数年しか違っていません。このことから今回修復するデッキと個人判断ですが使われている部品が共通部品と思います。形状が多少異なっていましたが不良個所の修復には役に立っています。随時不良個所の代用使用については各項目で説明をします。
消耗部品である キャプスタンベルトの発注
今回修復する機器はメーカーからの補修部品の供給はできません。ゴム関連の部品は経年劣化により必ず交換しなければ修復することができません。今回代用ベルトを製作している個人の方を見つけ出すことができました。純正部品ではありませんが代用品を使って修復します。
発注したベルトは各種のサイズを作成販売している方で非常に助かっています。部品にはベルトの全長 390mm ベルト幅 8mm と記載されており在庫がありました。ベルト厚み1mm の平ベルトを入手しました。この製造されている方は 同じく消耗的なピンチローラーも軸受けを送付すれば新しくピンチローラーも作成してくれます。道楽作業でこのような骨董品機器を修復するにはありがたい入手先です。
ベルトが到着するまで各部不良個所の点検・修復作業に取り掛かります。発注後3日程で到着しました。
メカニズムのオーバーホール
![]() |
フライホイル部のハーツリストより |
まずは本体よりフライホイルの取り外し作業です。
![]() |
ピンチローラー作動アーム部のパーツリストより |
次にキャプスタン軸受けからキャプスタン軸を抜きとる作業ですが 注意が必要です。入手したデッキではキャプスタン軸にテープが接触する個所がテープ・カスがこべり着いており このテープ・カスを完全に除去しないと抜き取り時軸受けを痛めてしまいますので 根気よくテープカスを除去してください。間違っても金属のへら・マイナスドライバーなどを使用しないでください。
この作業前には溶解したキャプスタンベルトを除去していないと手先が汚れますので注意してください。キャプスタン軸を抜き取る場合 フロントパネルにある通常目視できない油止めゴムの取り外しが必要です。キャプスタン軸飾りカバーにはねじが切ってありますので回転させて取り外しください。
フライホイルが分解できましたらフライホイル・ベルト接触面は粘着したベルトの成分が残留しないようにエチルアルコールで根気よく清掃します。
キャプスタン軸受けにはスピンドル油を注油してフライホイルを元に組み立てます。まだベルトが到着していませんので仮組をしておきます。
分解後判明した事柄ですがキャプスタン軸を分解するときには フライホイルを抜き取ってからシャフトをフロントパネル側に分解する必要があると思います。軸のテープ走行部分が鏡面仕上げではありません。この仕上げにより軸を抜き取るのに軸受けを痛める可能性があります。X-10R 系ではフライホイルとキャプスタン軸は圧入されており分離できません。同じ感覚で分解したため後で判明した事柄です。
フライホイルを分解した場合は スラスト調整が発生します。後部プレートとキャプスタン軸の隙間は0.1~0.2mm程度に調整します。マニュアルには寸法は記載されていませんが 隙間ゲージが無い場合 普通名詞は紙の厚さが0.2mm 程度ですので 名刺を挟んで調整するのもよいと思います。スラスト調整はキャプスタン軸に取り付けられるフライホイル取り付け位置で可変します。
メカニズム分解・注油
メカニズムで稼働する個所を手動で各部動作状況の点検・確認をします。
ピンチローラー駆動アームの不具合
![]() |
ピンチローラー駆動アーム軸受けの分解注油 |
分解後確認しますとグリスの劣化が確認できました。古いグリスを除去後新しいグリスを注油組み立てます。グリスが劣化しているため軸とスリーブ(アーム部の円筒)間のグリス劣化による摩擦力が大きくなり 軸から抜き取るのに苦労します。
組み立て後ピンチローラー駆動アームはスムーズな動きとなっています。又このアームと連動しているテープガイド金具部⑫~⑭も分解注油します。
左側(サプライリール側)テンションアーム部の不具合
![]() |
インピーダンスローラー・テンションアームローラー部の分解注油 |
次にテンションアームローラー部はアームの取り付けイモねじで取り外します。ローラー部と全面パネルの間隔は約1mm ですので隙間を記録してから分解してください。これらの作業によりテンションアーム軸受けとシャフトのグリス注油ができます。注油後分解時とは逆の手順で組み立て調整してください。インピーダンスローラー軸受けはスピンドル油を注油してください。ブラシ圧力の調整がうまくできないと インピーダンスローラー回転に影響が出ますので注意してください。接触が不完全であればオートリバース機能が働かない場合もあります。
リール取り付け台(ターンテーブル) リール固定金具部(シャフト)の変形
たぶん粗大ごみとして扱われたデッキと思われます。右側リール台のテープリール固定軸が高速回転すると軸がぶれて回転しているのが判明しました。機器を乱暴に扱ったためリール台シャフトの変形です。こればかりはリール台の変形修正はできません。以前修復を試みましたが完全に修復できませんでした。ここで以前修復の犠牲となったX-10R の登場です。リール台をよく観察するとリール台の形状が似通っています。リール台に張り付けられているゴムマットの模様が違うだけで共通仕様できることが判明しました。取り付けますと左・右でリール台ゴムマットの模様が異なるため X-10R のリール台を左・右とも交換しました。ゴムマット違いはデッキ動作には影響ありません。このようにジャンク品・中古品は入手するまでは簡単な写真だけでは良否の判断ができません。実働させて判明する個所も多々発生します。骨董品修復には数多くのリスクが伴います。
今回リール台高さも狂っており 再調整しました。
リール台高さ調整用に使用するメーカー指定プラスチック空リール 7号 太ハブ・細ハブリール
TEAC RE-702(2 inch Hub)
TEAC RE-701(4 inch Hub)
又この空リールを使って各リールの回転トルク調整にも使用します。左・右リールモーター バックテンション 巻取りトルク調整に使用します。使用する測定器は スプリングバネ秤 を使用します。
ピンチローラー表面を清掃するが汚れが完全に取れない
ここでまたもや X-10R 部品取り機の登場です。エチルアルコールで表面を清掃しましたがゴムの経年劣化により汚れが取り去ることができませんでした。機種が異なりますがもピンチローラーをよく観察すると同じように見えます。装着しましたが問題はありません。以前のユーザーはこまめにデッキのメンテナンスをされる方ではなかったようです。
このようにデッキはこまめにメンテナンスを実施しないと長寿命とはなりません。又正規の特性も発揮できません。特に骨董的な生テープを使うと頻繁に汚れます。ご注意ください。
各ヘッド部・テープ走行部分の清掃
以前の所有者はあまりメンテナンスをされていないように感じました。ヘッド部の錆も発生しており保管状態も悪かったようです。ただヘッド摩耗状態は少なく良好であり あまり使用頻度の多くないユーザーと思いました。ヘッド部は目の細かいコンパウンドで研磨することによりある程度は見栄えも・テープカス汚れも回復することができます。又テープ走行することにより接触する部分テープガイド金具などは丁寧に清掃してください。最終的にはエチルアルコールを使いコンパウドのような油成分は清掃してください。
100番タイプの生テープを使い長時間エージングをすることにより テープとヘッド接触面のあたりがよくなると思います。
ブレーキ動作の不具合
![]() |
テイクアップ側リールモーターブレーキ機構 素材フエルト |
今回メーカーからの補修部品は入手できませんのでブレーキシュ材質をフエルトから天然皮革に変更して修復しています。材質変更によりブレーキの効き具合は良いほうに変化します。
![]() |
バンドブレーキ材質をフエルトから天然皮革に変更して修復 |
ブレーキ機構を分解し金属製板バネ・ブレーキバンドに接着してあるフエルトをはがし 新しい天然皮革を貼り付けます。
使用されているフエルトの寸法は 180mm × 12mm × 1.0t のフエルトが使用されています。材質は羊毛フエルトではなく 化学繊維のフエルトが採用されていました。交換後ブレーキ調整をしなければなりませんが今回使用したバンドブレーキシュは同じ厚みの天然皮革を切り出しました。新しい皮革を張りつけるときには 板バネに付着している古い接着剤は丁寧に除去してください。その後新しい天然皮革のブレーキシュを ボンドG17 のゴム系接着剤で貼り付けます。
![]() |
修復後 天然皮革 バンドブレーキ |
このようにメーカーからの部品供給ができませんので 代用部品を作成しなければ機能回復することができません。
左図で白色が使用されていたフエルトで 茶色の帯2本が今回採用した天然皮革です。新しく交換した状態ではブレーキの効き具合が強く 弱める方向に調整ねじで調整します。
天然皮革に交換し調整後ブレーキ動作は安定した動作となっています。
調整規格及び準備物
・ 空リール TEAC RE-701 同等 通称7号リール 太ハブリール RE-702 は細ハブリール
・ タコ糸 1m程度空リールに巻き付け
・ バネはかり MAX 1Kg測定できるもの
注 調整単位は1Kg-cm ±200g-cm と調整数値が記載されています。この単位を理解しないと誤調整となります。測定に使用するリール違いでの調整値を計算するように指示されています。
まずは測定するリールサイズを決定します。
例として TEAC RE-701 の場合直径は10cm であり 半径は5cm ですので
調整値 1000g-cm = 半径(radius-cm) × 測定値(g)
上記公式に当てはめると太ハブリールでは半径は5cm となりますので
測定値(g) = 1000(g-cm) / 5(cm)
を計算すると調整値は 200g と計算できます。RE-701 の場合 調整値 200g±40g に調整するわけです。
測定 (停止時ブレーキが動作している状態で測定)
右側(テイクアップ)リールブレーキトルク調整
タコ糸を引き出しながら測定 リール回転方向 時計回り(CW) 200g ±40g
左側(サプライ)リールブレーキトルク調整
タコ糸を引き出しながら測定 リール回転方向 反時計回り(CCW) 200g ±40g
注 各リールブレーキトルクはバランスよく同様の数値となるように調整
調整箇所 各リールブレーキトルク調性M3 ねじ2本を調整 (画像右上参照)各リールブレーキ .逆回転のトルクは弱く測定されます。
RE-702 細ハブリールを使用した場合の調整値
1000g-cm = 半径(radius-cm) × 測定値(g) の公式から 半径 2.9cm を代入すると
344g ±69g の調整値となります。
昔から機械のブレーキ機構に使われるブレーキシュの材質として天然皮革がよく使用されます。一般的な機械でのブレーキシュ材質は 一時アスベストのブレーキシュが使用されましたが健康被害が発生することにより現在使用されていません。フエルトに比較して天然皮革は動作安定していると思いますが 製造コストアップにつながり安価なフエルトを使っているようです。フエルトから天然皮革に変更した場合必ず上記調整をしなければなりません。交換調整後はテープたるみも発生しません。安定したブレーキ特性を得ることができました。
同じくテープ走行時の各リールモーター・バックテンション調整も同様のバネはかりを使い測定・調整となります。
以前主流であった家庭用VTRのバックテンションレバーと連動しているブレーキバンドは皮革が採用されていました。このように素材はフエルトではなく 精密なブレーキ箇所では皮革の材質が採用されています。
失敗事例
・ サービスマニュアルは英語で記載されています。その調整仕様書に従い調整しますが 調整に使用する7号リールサイズが empty 2"hub reel の表示で最初 2インチハブと解釈してしまいました。測定状態図ではリール品番はRE-701 となっており 良く調べると RE-701 は4インチハブです。同じ数字では直径と半径ではハブの大きさが異なります。RE-702 は細ハブで通称2インチハブです。
メーカー発行のサービスマニュアルでは詳細は記載されていません。初心者などでは誤調整が発生する理由です。根底には熟知したサービスマンが扱う資料であるからです。
・ 天然皮革に交換後ブレーキ調整を実施しないまま いきなり7号リール再生エージングテープでもって早送りから停止操作時ブレーキトルクが大きいため150番テープが一部張力が過大となったため伸びてしまいました。リーダーテープと生テープ間接続部分も切断事故が発生しました。フエルトに比較して天然皮革はブレーキドラムとの摩擦抵抗が大きく 調整不良は事故の元ともなります。ご注意ください。
電気回路の点検
キャプスタンベルトが到着するまでの時間を利用してメカニズムに付帯している個所の点検及びアンプ部の点検をしました。キャプスタン軸は回転することができませんが ほかの動作については点検することができます。
まずはメカニズムと連動している動作確認です。
F,FWD REW 動作には問題なく各リールモーターは回転します。この動作を確認するには右側のテンションアームを動作位置にすることにより各モード試験ができます。その時点でキャプスタンモーターの回転および回転数変化・逆回転は各モードに対応しており正常と判断しました。あとはキャプスタンベルトを装着しなければ次工程に進めません。
ここでシステムコントロール回路は A-6300 と異なっており 電子回路による半導体ディスクリートによるシーケンス回路です。A-6100MkⅡ のマニュアルを確認しましたが異なる回路構成であり部品点数が多く困惑しました。参考程度となりました。システムコントロール回路故障が発生していないことを祈りつつの修復作業です。
![]() |
操作パネルスイッチ群 |
このモードスイッチを ON すると異臭が発生。嫌な焼け焦げの状態の異臭です。その時には REC LED が点灯するはずが短期間点灯するが後は消灯状態と ポーズ LED 点灯状態も正常ではありません。一番厄介な時間のかかるシステムコントロール回路故障で悩みました。
![]() |
システムコントロール基板 |
システムコントロール基板にはよく使われる論理回路ICが使われていません。X-10R ではMSI,C-MOS論理IC X-1000R では 4bit μcon,C-MOS論理IC が使用されています。この機種ではトランジスターとダイオードの論理回路です。製造された時代を考えれば 当時の策としてリレーシーケンスから脱却して製造コストと技術力で設計されています。
システムコントロール回路解析に時間が必要なため 他の関連した場所から点検を開始しました。
![]() |
電源回路基板リレー制御回路 |
この状態の時にモードスイッチをONするとアンプに出力される信号もレベル変化しているのが判明しました。ここで一番基本的な点検個所である各基板に供給している電圧を測定するとDC24Vが測定できます。3端子レギュレーターICによる電源回路と判明しました。
スイッチ操作により電源電圧が低下することが判明しました。どこか録音回路で短絡事故が発生していると判明しました。焼け焦げる異臭付近が犯人と思います。バイアス発生基板を点検するにシステムコントロール基板が邪魔であり取り外し基板点検すると1/2W型抵抗の焼けが目視できました。
A-6300 の回路図とは異なる回路構成です。 A-6100MkⅡと比較するとよく似ています。バイアス発振回路は X-10R と同じようなバイアス100KHz OSCユニット仕様です。抵抗を確認するとバイアス電圧調整回路の抵抗が焼損しているのが確認できました。R408 120Ω 1/2W型と判明しました。この抵抗からOSCユニット回路への電源供給です。アナログ回路計を使いOSCユニット単体試験をすると電源端子は抵抗値が低くユニット内部で短絡故障と判断しました。A-6300 ではバイアス発振回路はディスクリート回路で構成されており単体部品の交換作業は可能ですがユニット仕様により修理ができません。OSCユニットの外観を観察しますとよく見かけることがある部品です。
ここで以前修復の犠牲となった X-10R の登場です。まったく同じユニット部品が使われており このOSCユニット交換で不良個所の修復ができました。修復後正常動作をしておりREC LED,PAUSE LED も正常に点灯動作が確認できました。システムコントロール基板の故障ではなく安心しました。REC LED は連続点灯時バイアス発振回路動作し点滅時は録音モードとはなりません。X-10R のシステムコントロール回路故障で動作シーケンスはある程度理解できているため 長時間悩まずに問題解決となっています。やはりTEACの動作シーケンスは機種が異なりますが似通った動作となっていました。
![]() |
不良交換 リール台・バイアスユニット・VUメーターランプ・焼けた抵抗・錆びたねじ |
キャプスタンベルトの到着
発注したキャプスタンベルトが到着しました。さっそくメカニズムに取り付けします。メカニズムはオーバーホールが完了しており 各部の取り外したねじはねじロックペイントを使ってねじロックをします。純正のねじロックペイントではありませんがホームセンターなどで販売されている車のキズ補修用マニュキュアタイプのラッカー補修塗料を使用しています。付属の刷毛で締め付けたねじ部に塗装します。今回使用した色合いはパールマイカの補修用塗料で白色の塗料です。
このようにねじの締め忘れなどが無いようにペイントロックは重複点検作業でもあります。
キャプスタンベルトを取り付け後まずはテスト用のテープを装着せずに 各回転する部分の手の感触だけで点検をします。この作業の場合巻取り側のテンションアームを反時計方向に動作させてください。フロントパネルとアームの間にウエスなどを挿入すればアームが固定され両手を使って点検することができます。
・ キャプスタン軸の回転点検(反時計周りの回転) テープスピード切り替えによる回転数点検
・ プレイ時の巻取りリール回転および回転トルク点検(反時計周りの回転)
・ 供給リールの回転および回転トルクの点検(時計周りの回転)
上記作業が完了し異常がなければ損傷してもよい音楽などが録音されたテープと空リールを装着してください。最初から10号リールのテープを装着しないで7号リール程度のテープを装着します。その場合 REEL セレクタースイッチは SMALL 側にセットしてください。リール大きさ違いで各リール回転トルク変化も確認ください。最初から高額なテストテープを使っての点検は避けてください。どのような故障が潜んでいるかもしれません。それと同時にテープ走行系・各ヘッドの消磁作業を実施してください。テストテープにノイズを付加させてしまうこともあります。
音楽などが録音されたテープ再生で異常がなければ今回修復したメカニズム特性の点検・調査です。
サイクル交換
このデッキ購入先は電源周波数が50Hz地区から購入しました。ベルト不良でしたが修復している地域は60Hzです。機器には50Hz用と記載されており まずはサイクル交換作業が必要です。ベルトは60Hz地区ですのでモータープリーの直径が小さい側に装着します。ベルト位置は後部側となります。50Hzではフロントパネル側のモータープーリーにセットします。次に各ACモーター用進相コンデンサーの容量変更作業は簡単で機器内上部にある基板のスイッチ操作で60Hzにセットします。
これらの作業でサイクル交換作業は終了です。
サイクル交換作業も終了しており録音されたテープ再生では音程が狂っている・音楽のテンポが違うなどなどの違和感は発生していませんでした。聞きなれた音楽再生ですとテープスピード誤差は2%狂えば違和感として感じることができます。過去には音楽再生だけで±0.5%までは判別できていましたが 現在では人間測定器も誤差が多くなっており1.0%誤差までは聞きなれた音楽のヒアリングによる判別の限界です。年は取りたくはありません。しかし自然の生業です。この機能を測定器に頼らない職人技ともいわれます。
メカニズム特性調査
![]() |
テープスピード・ワウフラッター測定 |
19cm/sec YTT-2003
9.5cm/sec YTT-2002
3KHzテストテープを使って確認しましたが骨董品ですが優秀なメカニズム特性です。
19.05cm/sec テープスピード誤差 +0.43% 3013Hz
ワウ・フラッター 0.018%
測定レンジはメーターフルスケールで 0.1 %で測定。
リバースモードではワウフラッターが多少悪くなります。 0.04%
テープ走行位置でのドリフトは15Hz 以内であり問題はありません。15Hzの誤差をパーセントで表すと 0.5%です。
機種にもよりますがテープスピード誤差範囲は合格ラインとして ±1.0%以内であれば正常な数値です。周波数カウンターで測定した場合 ±1.0%の合格ラインは 3030Hz~2970Hz の範囲内です。シビアな数値として ±0.5% の場合 3015Hz~2985Hz 以内が望ましい測定値です。ワウ・フラッター計を使用すれば回転ムラと同時にテープスピードも測定ができますので短時間で確認・調整ができます。テープスピード点検用のテストテープはレベル変動が発生していても記録されている周波数は経年変化しませんので レベル調整用のテストテープに比較して使用可能な期間は長いと思います。
テストテープ テクニクス O-W 190
測定器類
ワウ・フラッター計 LEADER LFM-39A
周波数カウンター タケダ理研 TR5142
周波数逓倍器 HP 5268A
上記測定機器を使っての測定値です。多少スピードが速いように感じられますが この機種ではモータープリーの直径の異なるプリー交換しか調整はできません。誤差内の規格と判断しました。
TEAC ではテープスピード調整用 直径の異なるモータープーリーが存在したかは不明です。某製造メーカーでは存在しました。微調整用モータープリーに種類が判別できるようにマーキングされています。ほとんどは標準品マーキングされていないモータープーリーです。
テストテープ・測定機器類によるレベル調整
![]() |
A-6300MkⅡ アンプ部調整箇所配置図 |
メーカーからの調整マニュアルは新規に作成した機器での調整項目であり 故障修理後の調整については必要箇所のみで良いと判断しています。上記に掲載しました調整箇所配置図ですがデッキ底板に張り付けられていたものです。参考としてください。
準備物
テストテープ類
メーカーからは指定されたテストテープ類・録音テスト用リファレンステープの準備が必要です。現代においてはほとんど入手不可能なものばかりです。もしも当時のテストテープがあったとしても テープの経年劣化により特性が違っていると解釈しなければなりません。道楽・趣味における調整作業ですので プロの調整とは異なることかもしれません。
取引証明が必要なプロの仕事であれば 各測定機器・テストテープ類は定期的に 校正証明 は取得していると思います。この校正証明の意味も解らず大きな顔をしている事業者も存在するのも事実です。修理・調整依頼時には信用のおける業者を見極める必要があります。その見極める材料の一部であると思います。官公庁・民間の一部では 作業内容における完成図書(作業内容明細書)に必ず添付する書類の中に含まれる校正証明書です。このような趣味・道楽のオーディオ機器であればここまでは必要がないと思いますが・・・・・・。
この調整作業は自己校正による自己満足の世界での調整です。
・ 400Hz 0dB LEVEL SET TAPE (YTT-5001A)or(YTT-1003) 19.05cm/sec
・ 周波数特性調整用テープ (YTT-1003) 19.05cm/sec
・ 周波数特性調整用テープ (YTT-1002) 9.5cm/sec
・ ブランクテープ・リファレンステープ (YTT-8013)(YTT-8003)
上記がメーカーからの指定された調整用テストテープ類です。
TEAC は生テープ製造メーカーではありません。その中でも調整用に使用されるブランクテープはユーザーが多用される国内製造品OEMであると思います。この証拠に市販されている生テープがTEACテストテープとして品番が記入されたシールにシリアル番号まで記載されています。
リファレンステープ YTT-8003 (FUJI FILM FB-151-555) 憶測ですが YTT-8003 For LHⅠ と推察します。このテープは Super Low-noise Hi-output と明記されています。
良く調整に使用される YTT-8013 For LHⅡ の生テープは品番が不明です。そのほかにYTT-8053 For EE が存在します。EEテープについては TDK SA Maxell UD XLⅡ であると思います。
この調整している A-6300MkⅡ では YTT-8003は BIAS-2 EQ-1 9.5cm/s 録音周波数特性調整用に使用します。
![]() |
TEAC リファレンステープ YTT-8003 FUJI FILM FB-151-555 |
![]() |
新規に FULL TRACK で作成した副標準テープとリファレンステープ類 |
この中でも基本レベル調整用テープは新規に自己作成した 副標準テープで調整をします。周波数特性調整テープは骨董品でレベル低下が発生していますが BTS5313 T19 放送局規格品で調整します。
録音テストについては YTT-8013 代用品として リファレンステープは 使用頻度のすくないプロ仕様品 Maxell PM50シリーズのテープを使い調整します。プロユースではQUANTEGY(旧AMPEX) 456 をリファレンステープとしてよく使用されますが このテープは+2dBほど感度が高く ほかの音楽専用テープと比較すると使いにくいため使用は控えています。QUANTGY 456 ばかりを使うのであれば調整は可能です。プロ仕様品と違い簡単に民生機器はユーザーサイドで細かく バイアス・録音レベル調整できる機能は取り付けられていません。
新規に調整用テストテープとして作成した各種副標準テープ(SUB TEST TAPE)で調整します。各テープは正規テストテープと同様の FULL TRACK で作成しました。全数 5号生テープで Maxell PM50-5LB と QUANTEGY 456 です。業務用途として販売されているテープであり 各社製造終了時期に近い特性変化の発生していないテープを選択しました。
アンプ調整に必要な測定機器類 例
・ ACミリボルトメーター(dBmスケール表示 0dB 0.775V)
・ オーディオジェネレーター(低歪率正弦波発振器)
・ オーディオアッテネーター(数dB単位で調整可能なもの)
・ オシロスコープ(最低単現象・10MHz以上の特性)
・ 周波数カウンター
・ 歪率計
・ モニター用ステレオアンプ
・ 疑似負荷抵抗10KΩ
・ 測定器に接続するための特殊ケーブル・アダプター類
などの校正済・測定機器を準備ください。 なお補足説明として詳細は musenan12.blogspot.com
を参考としてください。
600Ωオーディオ・アッテネーターは使用しなくても正確な出力レベルが設定可能であれば必要ありません。オーディオジェネレーターには正確な10dbステップのアッテネーターが内蔵されていますので最初基準レベル -8dBm の信号にプリセットすればあとは出力レベルアッテネーターの選択で希望のレベルを出力することができます。又重複確認としてミリバルで出力レベルを監視します。
![]() |
本体底部にある各ユニット基板 |
A-6100 と A-6100MkⅡのレベルダイアグラムを比較すると同じレベル数値となっていました。この結果から今回調整する A-6300MkⅡのレベルダイアグラムは A-6300 と同じと判断して調整を進めます。正規のサービスマニュアルが入手できていればこのような手間な作業の必要ありません。
デッキ本体に取り付けられている VUメーターは X-10R 系のような直流電流計(ラジケーター)ではありません。交流電圧計であり 0dBm の信号レベルで指針が 0VU を表示する正規のVUメーターと同等と思います。VUメーター回路にはゲルマニューム・ダイオードを使った整流回路は存在しません。当時としてはコストのかかっているVUメーターです。
調整箇所の表示
再生ヘッドアンプ基板(PLAY BACK EQ AMP)
再生イコライザー(PB EQ) 19cm/s L-ch VR101 R-ch VR103
再生イコライザー(PB EQ) 9.5cm/s L-ch VR102 R-ch VR104
再生ラインアンプ基板(PLAY BACK LINE AMP)
バイアストラップ(BIAS TRAP) L-ch L201 R-ch L202
再生レベル校正(PB CAL) L-ch VR201 R-ch VR203
再生VUメーター校正(PB M CAL) L-ch VR202 R-ch VR204
録音アンプ基板(RECRD AMP)
録音VUメーター校正(REC M CAL) L-ch VR302 R-ch VR305
モニター出力校正(MONI CAL) L-ch VR301 R-ch VR304
録音レベル校正(REC CAL) L-ch VR303 R-ch VR306
録音イコライザー(REC EQ) L-ch L301 R-ch L303
バイアストラップ調整(BIAS TRAP) L-ch L302 R-ch L304
バイアス発振基板(BIAS BOARD)
バイアス 1 調整(BIAS ADJ) L-ch C405 R-ch C406
バイアス 2 調整(BIAS ADJ) VR401
ダミーコイル(DUMMY COIL) L401
上記調整項目が各ユニット基板にある調整箇所です。調整作業内容が判断できる表示です。
この調整は同時期に製造された A シリーズのテープデッキと調整項目が似通っています。設定・調整するレベルもほぼ同じとなっていました。参考となれば幸いです。
調整箇所の配置図が底板に張り付けられていますが多種類掲載されています。
A-2300/A-3300 SERIES A-2340SX/A-3340S A-6100 A-6300 SERIES / A-4300SX A-2300SD A-2340RS などが多少基板の構造が異なりますが調整箇所を明示してありました。同時期に生産された機器と思います。
VUメーターランプの交換
![]() |
VUメーターランプの交換 |
最初VUメーターランプ交換作業において本体からVUメーターを取り外しメーターカバーを分解したのち代用品のランプ交換としました。配線を取り外し本体から抜き取るには非常に手間のかかる作業内容です。
分解して判明しましたが本体と前面パネル部はよくある接着テープで゛接着されておらず 本体にVUメーターが取り付けたまま前面のメーターカバーが取り外せるのが判明しました。後の祭りです。今回の作業では手間と労力が必要でした。
![]() |
ジャンク測定器からの再利用品 VUメーターランプ |
今更ランプ切れの発生しないLED照明に変更を考えましたが VUメーター照明は橙色っぽい光源でないとVUメーターらしくありません。白色LEDでは雰囲気を壊してしまいます。実働している真空管式コントロールアンプ(LUXKIT A3400)は作成後45年近くなりますがパイロットランプは小さな豆電球です。この豆電球も数回球切れが発生しておりその都度電球を交換していましたが 2年ほど前に白色高輝度LEDに変更しましたが多少違和感があります。やはりこのようなテープデッキでは電球色照明にこだわりました。
交換した電球は 古い測定機器に使用されていた麦粒型の豆電球です。通称麦球です。VUメーターに採用されていた電球形状とは異なりますが今回ジャンク品を使っての修復です。このデッキでは直流電圧7Vラインから点灯する回路です。A-6300 では交流電圧5.5Vトランス巻線を使って点灯していました。実際に駆動電圧を測定するとDC6Vです。
代用品ランプを使用した関係でランプの明るさを調整しなければなりません。電球と直列に抵抗を取り付け明るさ調整します。今回使用した電球では27Ωを接続することにより目的の照度を得ています。取り付けた抵抗はVUメーター内部に配線し VUメーターに内蔵です。極力電球の延命を考慮し明るい光源ではありません。
左・右のVUメーターランプは 見た目照度違いは良くありません。電球切れの発生していない側のVUメーターも同一の麥球に交換しています。直列に挿入する抵抗は定電圧電源を使い抵抗値を決定しました。
正規のVUメーターとは
測定器である交流電圧計です。この機種で使用されているVUメーターも構造は整流型交流電圧計でありメーターの接続端子に接続される電圧は交流電圧を印加することによりメーターコイル部に直流電流が流れ磁力線の強さにより指針が駆動する構造です。指針位置が0VU の時には入力端子に交流電圧 0.775V/rms 0dBm の正弦波が入力した場合表示します。レベルダイアグラムでも信号レベルは 0dB と記載されています。
メーター部は直流で動作しますので VUメーター内部には交流を直流に変換する整流回路が内蔵されています。使われている整流器(ダイオード)はゲルマニューム・ダイオードが採用されており ゲルマニューム・ダイオードの順方向電圧は 約0.1V 程度であり この電圧より高くなると電流が流れるようになります。100mV(0.1V)以下の電圧ではダイオードを電流が流れないため指針が振れません。これらの構造により -20dB 以下の信号では針が振れません。又100mV前後の電圧はダイオードの比直線部分となりますので指針は直線的な動きができません。整流器は昔亜酸化銅でしたが周波数特性が悪く昔のカラーテレビ映像検波回路に使用されるゲルマニューム・ダイオードは周波数特性も良好であり このような交流電流計の整流器によく使用されています。
交流電圧を考える中で正弦波の場合交流の実効値電圧に1.41倍した最大値も考慮しなければなりません。100mV交流電圧の最大値は141mV ですので現実には-20dB 以上の信号は直線的な動作となっていると判断できます。
サービスマニュアル調整手順書による各調整
![]() |
400Hz 0dB LEVEL SET YTT-5001A |
大切なテストテープを扱いますので調整前には必ず録音された音楽テープなどを装着し 正常に再生できるかを確認してください。指示がない限り19.05cm/sec での調整です。(SPEED HIGH)) 又フロントパネル右下にある RECODE にあるスイッチは EQ-1 , BIAS-1 と設定してください。
現実に調整作業をしていく中で このデッキでは垂直状態での使用を基本として設計されているため水平設置用の脚がありません。垂直状態であれば本体底部にある調整箇所を調整しますので作業はできません。本体が垂直であれば車・電車整備のようなピット構造でないと調整することができません。又横倒しではテープを装着する事ができません。調整時には本体を水平としなければ作業はできません。調整されるときには作業環境の試行錯誤が必要と思います。今回本体を水平とし 木製の嵩上げ台を工作しました。
調整におけるミリバル・オシロ の測定機器接続箇所は デッキ後部パネル LINE OUTPUT 各チャンネル RCA端子に接続します。測定内容により チャンネルごとに接続を変更してください。又10KΩの負荷抵抗も取り付けてください。入力信号は正確なレベルの信号を LINE INPUT 端子に並列接続として入力ください。
TEAC の各機種調整マニュアルでは入力レベル・出力レベルには機種により若干異なっていますので 機種ごとの基準値を確認してください。又製造会社の違いでも異なりますのでご注意ください。調整周波数も違っている場合もあります。当時販売されていた各社のデッキは ほとんどNAB 特性で調整されています。このことから内部構造さえ把握できれば他社のデッキも同様に調整できると思います。
PLAYBACK HEAD AZIMUTH ADJUSTMENT(再生ヘッド角度調整)
・ PASS 各ヘッドは交換をしていません。各ヘッド調整ねじは ねじロックペイントを目視すると調整された形跡はなし。
調整方法は オシロスコープ及びミリバルで各ヘッド間の位相特性・出力レベルを最大に調整します。 YTT-1003 ヘッドアジマス調整信号 15KHz or 16KHzにて 最大値に調整します。その後各チャンネル間位相ずれを0度に近づけます。 測点A
SPECIFIED OUTPUT LEVEL SETTING(設計基準値調整)
・ OUTPUT(MONITOR) スイッチ TAPE モード ➡ OUTPUT VR MAX
・ YTT-1003 TEST TAPE 400Hz 0dB LEVEL SET 信号を テープスピード HIGH で再生 (又はYTT-5001A再生) VR201,VR203 (PB CAL)を調整 ミリバル表示 各チャンネルとも -2dBm に調整します。
・ OUTPUT VR MAX ➡ OUTPUT VRを反時計回りに調整し 各チャンネルとも -8dBm に調整すると 2-O'CLOCK POSITION 出力調整VRつまみは⑦ 2時の位置になりますのでこの位置に固定してください。 もしもこの時点で多少バランスがずれている場合 VR201,VR203 (PB CAL)を再調整して同じ出力レベル ミリバル表示は -8dBm としてください。 この計測状態を 測点A と呼称します。
(注 以後は指示がない限り このOUTPUT VR位置を保持してください。キャリブレーション位置の固定)
補足説明
出力端子に疑似負荷抵抗 10KΩ を挿入していない場合 測定値はマニュアルの記載調整値よりレベルは +1.0dB 程度となります。所有している測定器であるミリバルの入力抵抗は 10MΩ です。接続による測定誤差はほとんど発生しません。精密測定時にはマニュアルに指示されている 負荷抵抗を接続してから測定してください。機種により負荷抵抗を接続しなくてよい場合もありますので調整マニュアルを確認ください。
(LINE OUTPUT 出力段トランジスターは ベース入力・エミッター接地・コレクター出力回路です。ローインピーダンス出力段と違い負荷抵抗による出力される電圧変化はエミッターホロワ回路に比べ 負荷側の抵抗値で電圧変動する回路です)
この機種は OUTPUT VR は再生時VUメーターと連動していますので VRを可変すればVUメーター指針位置も変化してしまいます。調整時 OUTPUT VRに触れると出力レベルが変動してしまうので VRが CAL の位置から動かないように仮固定しているわけです。
TEST TAPE 400Hz 0dB LEVEL SET 信号は録音におけるリファレンスレベル(reference level) 歪率(THD)が1%のレベルと明記されています。
VU METER CALIBRATION(再生VUメーター校正)
・ YTT-1003 TEST TAPE 400Hz 0dB LEVEL SET 信号を再生 (YTT-5001A) VR202,VR204 (PB M CAL)を調整 VUメーター指示位置を 0VU に各チャンネル校正します。 この時点の各出力端子レベルは -8dBm を確認ください。 測点A
![]() |
FREQUENCY RESPONSE BTS 5313 T19 |
・ テープスピード LOW 9.5cm/s にセットします。
・ YTT-1002 TEST TAPE 周波数特性調整信号を再生 400Hzの信号を基準値として±3dB 以内に調整 調整箇所 VR101.103 規格は±3dB以内に調整。 測点A
特に高域信号が+1dB とするのが理想であり低域・中域はほとんどの場合フラットな特性です。±0.5dB 以内と思います。
・ テープスピード HIGH 19cm/s
・ YTT-1003 TEST TAPE 周波数特性調整信号を再生 400Hzの信号を基準値として±3dB 以内に調整します。 調整箇所 VR102.104 規格は±3dB以内 測点A
・ 各チャンネル間誤差は 400Hz 0.5dB 以内 他の周波数については 3dB 以内となっていることを確認ください。リバースモードは 4dB 以内であることも確認ください。
PHONE OUTPUT CHECK(ヘッドホーン出力レベル試験)
・ PASS チェックのみでありヘッドホーンを接続して正常な音出しができれば OK
MINIMUM INPUT LEVEL SETTING(ライン入力端子最少基準レベル設定)
まずはオーディオジェネレーターよりの信号を設定します。400Hz -18dBm の信号を出力します。
RECORD モードスイッチは各ポジション設定してください。EQ SW-1,BIAS SW-1,MODE SW L,.R ON OUTPUT SW SOURCE
・ LINE VR MAX , ライン入力調整VRは最大値に設定 VR301,VR304(MONI CAL)モニターアンプ出力レベルの設定 ライン出力端子電圧 -8dBm に調整 測点A
・ PASS マイクイ最小インプットレベル確認 調整箇所はありません。基準レベルをマイク端子に入力しレベル確認のみです。VR301,VR304(MONI CAL)を-70dBm の信号入力時点検するようには明記されています。その時の出力レベルは -8dBm 測点A
![]() |
REC 0VU adj OUTPUT -8dBm adj |
・ オーディオジェネレーターよりの信号を設定します。400Hz -8dBm の信号を出力します。ミリバル・VUメーターが振り切れますので その後LINE INPUT VRを調整し ライン出力端子が -8dBm に調整します。計測点 測点A
(注 以後は指示がない限り このLINE VR位置を保持してください 設定A)
・ ライン出力レベルが -8dBm の時VUメーター指針位置を 0VU±0.5VU に調整 測点A VR302,VR305(REC M CAL)録音時VUメーターを 0VUを指示するように校正(調整)します。
この状態ではLINE VRの目盛位置は⑦ 時計短針2時程度と思います。このレベルがデッキ内 0dB の信号レベルです。-10dB の信号を入力する場合 入力信号レベルは -18dBm が -10dB の信号であるわけです。-28dBm であれば デッキ内信号レベルは -20dB です。設定A 状態です。
BIAS TRAP ADJUSTMENT(バイアストラップ調整)
・ バイアスSW 1 イコライザーSW 1 に設定 アウトプットSW TAPEテープモード RECORD MODE ON に設定 その後録音してもよいテープ(リファレンステープなど)を装着し録音します。RECORD LED が赤色に点灯すれば録音状態です。
・ この状態の時にバイアストラップの録音アンプ側にミリバルもしくはオシロスコープを接続 100KHzのバイアス信号が最少となるように調整 L302,L304 を調整 修理時であればバイアス調整用コンデンサーは調整されていますので波形観測はできます。コイルのみの調整です。通常の故障修理では 調整はしなくても良いと思います。バイアス発振周波数チェックとしては 100KHz ±5KHz であることを確認してください。周波数調整箇所はありません。
BIAS ADJUSTMENT(録音バイアス調整)
・ リファレンステープ YTT-8013 を使用しオーバーバイアスレベルの調整
・ 準備作業として 録音可能なリファレンステープをセット。 テープスピード LOW 9.5cm/s 入力信号オーディオジェネレーターより 7KHz -18dBm の信号をライン入力端子に接続 OUTPUT SW TAPE と設定します。
・録音開始 出力端子をミリバルで測定 バイアス調整コンデンサーVC405,VC406 を小容量値から可変し ミリバルでの電圧最大値を記録 その状態よりさらにコンデンサーの容量値を増加させる 増加すると電圧が低下しますので 先ほどマークした最大電圧値(ピーク電圧値)より -3dB の位置に設定 各チャンネルとも同様に調整 調整規格 -3dB±0.5dB 測点A 設定A
この調整は各チャンネルのヘッドの特性バラツキにより同じ電圧とはなりません。dB値 は絶対値で判断します。
(注 ライン入力信号レベル -18dBm は本体内部では -10dB の値です。ライン入力調整VRは測点A の状態を保持してください。)
今回バイアス発振ユニットを故障のため交換しましたので 再調整が必要です。実際に調整しましたがOSCユニットの特性管理ができていると思われ ほとんど調整ずれは発生していませんでした。
調整が終了すればテープスピードは HIGH 19cm/s に戻します。
RECORD HEAD AZIMUTH ADJUSTMENT(録音ヘッド角度調整)
・ PASS 各ヘッドは交換をしていません。
・ 調整信号は 10KHz -28dBm のライン入力信号で調整し オシロスコープで各ヘッド間の位相特性調整 測点A 設定A
RECORD LEVEL SET(録音レベル調整)
・ この調整はリファレンステープ YTT-8013 で 規準信号を録音した場合 再生された信号が 400Hz 0dB の信号となるように調整します。この時のキャリブレーションレベル・出力レベルは -8dBm になります。その時のOUTPUT VR の指示位置は2時の位置です。この位置がキャリブレーション(CAL)位置でもあるわけです。機種によってはVRの目盛にCALの表示がある機種もあります。
・ LINE入力信号レベル 400Hz -8dBm を録音 再生されるライン出力信号レベルが -8dBm となるように VR303,VR306 を調整します。その時 OUTPUT スイッチがSOURCE TAPE 共 VUメーターは 0VU を指示しています。録音する信号レベルが 再生されれば同じ信号レベルとなるようにリファレンステーフ「を使って調整しています。 測点A 設定A
OVERALL FREQUENCY RESPONSE(録音周波数特性調整) 19cm/s のみ(REC EQ)
・ PASS チェックのみ 各調整周波数において -28dB(デッキ内では -20dB)信号でもって再生された信号レベルが ±3dB 以内に調整 L301,L303 9.5cm/s は確認のみで調整箇所はありません。低域+3,-4dB以内その他の周波数は ±3dB 以内 測点A 設定A
・ PASS チェックのみ リファレンステープ YTT-8003 テープスピード LOW (9.5cm/s) BIAS-2 EQ-1 セット その後 各周波数調整用信号 -28dBm の信号レベルで録音し 再生される特性が 低域 +3dB,-4dB その他の帯域は +3dB.-2dB となるように調整 BIAS-2 VR401 測点A 設定A
リファレンステープ YTT-8003 は古いタイプの録音用テープと思います。現在においてはほとんど使用することがないと思われるテープ種であり このポジションを使う取扱説明書の確認もできていないため調整は実施していません。9.5cm/s での録音・再生点検程度としました。
その他の調整項目
修復作業においてあまり必要と思われない調整については 個人的判断により記載していません。調整項目のみの記載とします。
・ S/N 比 ・ チャンネル間クロストーク比 ・ トラック間クロストーク比 ・ 消去率 ・ レベルバリテーション・歪率 などの測定・調整項目です。
本体のスペックで歪率が表示されていますが この測定は 1000Hz 0dB の信号が録音されたときの再生された信号歪率を表示します。生テープの種類によりこの数値は変化します。X-10R では 歪率は0.8%以内と記載されています。今回調整に使用した400Hz 0dB の信号と比較しましたが大きな誤差は発生していませんでした。目安としては400Hzの信号の歪率でも問題はないと思います。現在所有している特性のよい生テープ QUANTEGY 456 は歪率特性が最良でした。今回リファレンステープとして使用した Maxell PM50系の歪率特性も良好です。0.5%以下の歪率です。テープの感度差が平均的なレベルにあり このテープを基準テープ(リファレンステープ)としました。
リファレンステープ選択の補足説明
![]() |
400Hz 0dB 信号の歪率測定 |
バイアスユニットにあるダミーコイルの調整方法についてはこのマニュアルには記載されていません。ダミーコイルを使用するときは 1トラックのみ録音する場合であり バイアス電圧が変化しないようにするための 録音されない他チャンネルの疑似ヘッド負荷用です。
![]() |
調整手順書 |
入手したサービスマニュアルは 英語で記載されています。翻訳・解説において 英語・日本語は不得意な分野であり 記述内容が間違っている場合もあると思います。参考程度の記載事項とご理解ください。
英語の辞書を片手に持って翻訳作業です。技術的な表現解釈に苦慮しました。近代的な電子辞書・wev 翻訳は使い物になりませんでした。
FWD,REV 再生において 基準出力レベルに約 0.5dB の出力差があります。気になる方はCAL 位置は通常2時の位置ですが このデッキの場合リバース再生時には録音開始前の 400Hz 0dB 信号を録音してあるテープでは OUTPUT VR を微調整して VUメーターを 0VU に合わせることにより見た目のレベルメーター誤差は解決できると思います。小生の場合テープの最初には10秒ほどの 400Hz 0dB 信号をキャリブレーション用として録音しています。この作業により生テープの違いによる感度差も把握できます。レベル差が2dB 以内であれば誤差の内と思いますが・・・・・。
X-10R ではFWD,REV 録音・再生が可能な機能が搭載されています。その機能のために6ヘッド構造です。録音・再生アンプは2チャンネル分しかありませんが 使われるヘッドに対応した再生レベル・再生EQが単独調整回路により制御されていますので ヘッドの特性ばらつきは補正される構造です。しかし現実には骨董品となると経年劣化・ヘッド摩耗による特性変化が発生しており 各チャンネル間・FWD,REV モードでのレベル変化・特性変化は発生しています。その様子がVUメーターの針の振れ方が異なり 精神上よくありません。その特性をそろえるためにテストテープを使い再調整する理由です。
基準レベル調整の概略
![]() |
TEAC TEST TAPE YTT-5001A 400Hz 0dB (200pWB/mm) |
録音はこの状態の時に LINE 入力端子に -18dBm の信号を入力し 出力端子で -8dBm に調整し 入力信号を -8dBm に変更後 モニター出力が同じく -8dBm となるように LENE 入力VRを調整ます。この位置が録音VUメーター 0VU 表示位置です。その後リファレンステープで 録音アンプゲイン調整で再生される信号が -8dBm となるように調整しています。
このデッキでは 基本レベルが -8dBm で調整しているのが判明します。この時 録音・再生 共 VUメーターは 0VU を表示します。複数台同じようなデッキを調整しましたが録音・再生イコライザー特性は大きな狂いは発生していません。ほとんど ±1.0dB 以内でした。
この再生された信号の 歪率(THD) を測定すれば 0.7% 以下であればデッキは正常に動作しています。1000Hz 0dB と 400Hz 0dB 信号の歪率を比較しましたが 測定数値に差はありません。ほぼ同じ数値でした。
調整において一番基本となる デッキ内 400Hz 0dB 信号のレベル設定です。この調整がされていないと録音・再生とも周波数特性調整もできません。TEST TAPE 400Hz 0dB LEVEL SET が調整作業に必要な理由です。
所有しているテストテープは製造後長期間経過しているため -1dB 程のレベル低下が自己校正により確認できています。現在は新たに作成したFULL TRACK 記録した 400Hz 0dB 副標準テープを使い調整をしています。長期間経過したテストテープ及び中古のテストテープはレベルは変化していると解釈しなければなりません。複数所有しているテストテーフも校正しましたが現実に数dB程度レベル低下しています。同じ基準値でありながら同じ数値を表示しません。どれでもって基準とするか悩みました。新しく400Hz 0dB 副標準テープを作成すれば数年間はレベル変動しないと思います。
作成した副標準テープは QUANTEGY 456 5号リール生テープを使用しています。正規のテストテープでは記録時間が1分ほどですが 作成した副標準テープでは15分間連続していますので調整作業時間を気にせずに調整可能となっています。
追記
YTT-1003 400Hz LEVELSET 信号と YTT-5001A LEVELSET 信号では記録されている信号レベルが異なります。
YTT-1003 400Hz 185nWb/m
YTT-5001A 400Hz 200nWb/m
製造された時代により生テープの特性は改良され良くなっています。ミュージック用としてハイアウトプット・ローノイズテープの普及により周波数特性拡大・残留磁束密度が大きくなり従来からのスタンダードテープと比較すると性能向上となっています。それらの特性に合わすために調整レベル変化が発生していました。185nWb/mと200nWb/m のレベル差は1.0dB であり 調製に使用するテストテープ種により 録音バイアス・出力レベルおよびVUメーター位置が異なります。個人的には 1.0dB 差ですので誤差の範囲と解釈してもよいと思いますが やはり調整においてはこの差も考慮して調整します。
このような調整過程において使用するテストテープ類・測定機類も校正が必要な理由です。自己満足の作業では 校正証明のある測定機器は所有していません。校正作業も道楽の一環であり 随時 Class 0.5 以上の測定機器で自己校正を実施します。
REV PLAY 時テープ走行不安定が発覚
長時間再生エージング時に発覚しました。10号リール150番テープ再生時リバース再生してすぐ再生音が不安定な状態となっておりテープ走行状態をよく観察すると ピーンチローラーから送り出されたテープがテープガイド金具でテープが乗り上げているのを確認しました。
よく観察すると10号リールで リバース開始時 5~10分間ぐらいテープ走行が不安定動作が現認できました。
バックテンショントルクが一番弱い動作状態であり 右側テンションアームがキャプスタン軸との間隔が広がっている場合 テープ走行が不安定動作をしています。テープが右側から左に移行していくとテンションアームはキャプスタン軸に近づき安定な走行となります。100番タイプのテープリバース再生時ではテープ自体150番のテープに比較して厚みがあり テープにコシがあるため不安定な走行をしません。この症状で悩みました。テンションアーム動作スプリング・ピンチローラー軸の角度・ピンチローラーの交換などを色々調整しましたが問題は解決しません。テンションアームが左側に動作点が移動しロックされれば キャプスタン軸に近ずくためテープ走行は安定します。
オークションサイトでA-6300シリーズを物色中 メーカーで不安定走行の対策した出品物を確認しました。ピンチローラーの右上にあるテープガイド金具が取り付けられており まさに悩んでいた症状回避策です。後付けの対策方法ですがこのような取り付け方はメーカーでないと加工・工作できないと思います。
メーカーでのテープ走行安定対策
キャプスタン軸カバーとテンションアーム取り付け部との間に対策金具が取り付けられており 中間にテープガイド金具が取り付けられています。簡単な写真では詳細は不明であり 金具かローラー方式かは判別できません。PCモニター画面の撮影であり見苦しい画像ですが概略は判明すると思います。この機種の左側テンションアームの構造はベアリング2個使ったローラー方式でありテープ走行摩擦の影響が発生しにくい構造です。それと同様の構造かもしれません。その後の機種ではベアリングを使ったテンションアーム構造は見受けられません。X-10R系では軸受けはメタル構造です。
今となってはメーカーからの対策部品入手困難です。仕方なくガイド金具を工作しました。材料としてジャンク品テープガイド金具を流用しようとしましたが部品抜き取り用 X-10R メカニズムから拝借しようとしましたが適当な形状ではありません。テンションアームローラーが適当であると思いましたが取り付け工作作業に問題があり断念。最終的には2mm 厚アルミ板を加工し 12mm直径の円盤を2枚切り出しました。テープガイド金具とはせずに ベアリングを使ったローラーでの工作です。マイクロベアリング 直径9mm ローラー部の幅は 6mm として インピーダンスローラーもどき としました。2枚の円盤間の距離はデジタルノギスを使い 6.5mm となるように調整します。旋盤がないため手作業での加工です。本体フロントパネルにM3タップねじを加工し ガイドローラーをM3 ×30L のねじで固定しました。固定するときには微妙な走行調整作業が発生します。高さ調整として0.1t~0.2t の自作調整用ワッシャーを数枚重ね合わせ挿入して走行調整をしています。又テンションアームとの段差調整作業も発生します。テープガイド金具としての材質はステンレススチールが望ましいのですが簡単には加工・工作はできません。加工の簡単なアルミ材を選択しました。
又極力テープ走行時の摩擦抵抗が発生しないようにテープガイドローラー取り付け位置を考慮しています。
通常は今回作成したガイドローラーには走行するテープは接触しないような構造です。通常動作時はローラーは回転しません。ホワード録音・再生時のテープ終端近くと リバース再生時はリバース開始後テンションアームが右側にある場合 キャプスタン軸との間隔が広がった時のみ動作するように加工・調整しました。テープ端から10分程度動作すればテンションアームがキャプスタン軸に近づき 走行しているテープはローラーと接触しなくなりローラーは回転しません。その後2枚の円盤はテープ走行規制用金具として働きます。
A-6300系のデッキは多数販売されています。新品時には問題発生頻度が少なかったと思いますが ピンチローラーなどの経年劣化によりテープ走行不安定となったようです。
同等機能搭載分 A-4300 シリーズでは同様の症状が考えられますが 装着できるテープは7号リールまでであり 右側テンションアームは A-6300シリーズのように右側に傾いて動作することはないと思います。キャプスタン軸とテンションアームとの間隔が開かなければこのような走行不安定症状は発生しないと思います。
手作業によるテープガイドローラーの工作により リバース再生モードも正常に動作するようになり 気分的にも安心して使用できます。やはりメーカーでも問題対策をしていたようです。
画像のようにピンチローラーは製造後30年以上の生テープを使った場合 ピンチローラーの表面が汚れているのが確認できます。バックコート面が剥離し ピンチローラーが汚れますのでこのように古いテープを使う場合一度使えは走行系の清掃・メンテナンス作業が発生します。新品及び製造後古くないテープばかりを使用するのであればここまで走行系が汚れることはありません。高額となり販売されているテープ種は限定されますが 新品の生テープを使用することを推奨します。
オープンリールデッキを運用するにはメンテナンス作業は必ず発生します。
オープンリールデッキは誰でも簡単に扱える音響機器ではありません。
まとめ
このようなオープンリールデッキの調整作業は 製造された時代でのテープにおいて 基準信号 400Hz 正弦波信号を録音した場合 磁気テープに記録される信号レベルを調整しています。前項目で記載しましたが 400Hz の信号 リファレンスレベル歪率1% の信号レベルを調整しています。
同じ録音レベルであっても 歪率は録音する生テープの種類により 磁気飽和点は異なっています。入力信号をVUメーターを監視しながら録音しますので 歪を少なく大きな信号で録音するための目安をメーターで監視しているわけです。取扱説明書では0VU を超えないように録音するように推奨されているはずです。メーター指針が0VU 以上になると録音される信号の歪が多くなるからです。現実には機械的なVUメーターではピーク的な大きな電圧は表示できず ある程度録音するテクニックが必要となるわけです。一部の機種にはピークメーター搭載品も存在します。
生テープに録音・再生されるレベル調整しているわけです。
電気特性調整において 特に OUTPUT VR は作業中に触れると調整位置が狂ってしまいます。これを防止するためにOUTPUT VR は接着テープをつまみに貼り付け つまみがずれないように仮固定しています。このように作業中に測定レベル変化が起こらないようにするのも一つの策となります。このセットの再生周波数特性を調査しましたが 400Hz 基準信号レベルとして調査しましたら高域で-1dB 程度のレベル低下が発生していました。このレベルであればメーカー出荷時特性の規格内です。今回高域信号が +0.5dB となるように調整すると 全帯域での特性は 1dB 以内に収まり ほぼフラットな特性が得られました。ただ低域の 80Hz では R-ch のレベルが片チャンネルに比較すると2dB 程低くヘッドアンプ回路の電解コンデンサーの容量抜けが発生している可能性があります。後日点検する予定です。
この修復作業をするのに基準となるテストテープまで作成してしまいました。記録信号はフルトラックです。校正済みの正規テストテープは入手が困難です。中古品のテストテープも入手しましたがレベル変動が発生しており真面に使えません。骨董品となると基準値を導き出すのに苦労します。別ブログにテストテープ作成過程も公開しています。修復作業の完成度は自己満足レベルです。
各項目 調整・点検の結果 ほぼ初期性能が得られました。40年近くなるデッキですが音楽を録音テストとを兼ねて作成です。再生音には古さは感じられません。アンプが真空管でありスピーカーシステムも高能率で 95dB/m の音圧です。数Wの出力で家庭内であれば音量不足とはなりません。音楽のジャンルとしては幅広くオムニバス形式で録音しました。最近はやっている若者の好む音楽ではありませんが 当時の音楽がアナログ音源で再生されます。クラッシック・Jポップ・歌謡曲・演歌・JAZZ まで幅の広い長時間・聞きあきない独自の選別です。このおかげで快適なお昼寝ができます。
道楽部屋は修復した骨董品オーディオ機器・骨董品測定機器で足の踏み場所確保に困惑しています。当初からのステレオシステムは真空管システムです。以前 X-10R 系デッキを多数台修復し実働するようになりましたが デュアルキャプスタン構造における走行不安定な機器が発生し困惑していました。初心に戻り今回 A-6300系に手を出してしまいました。修復過程において設計思想の違いが判明します。今回修復したデッキは遊ぶには手軽な機器と思います。今しばらくは骨董品デッキでもってアナログ録音・再生ができ 暇つぶしの種ができました。オーディオにおいてもデジタルシステムが主流となりましたが アナログオーディオは現在でも捨てがたいジャンルです。このような修復作業は誰でもできる道楽作業ではありません。趣味の世界としては扱われる方は極少量の人達であると思います。記載した事項が多少とも参考になればと思い くだらないブログを立ち上げてしまいました。
現在道楽部屋にはかさばるオープンリールデッキが4台転がっています。その他の機器は別室と山小屋保管です。カラクタが増殖しています。転がっている機種名は TEAC X-10R 2台 SONY TC-707FC この修復している TEAC A-6300MkⅡ です。オープンリールテープ10号,7号,5号リールの生テープが段ボール箱に山積み保管していますのでどのような環境か ご想像ください。ラックには測定機器類・真空管システムと90リットルのバスレフ型スピーカー2台を含めると・・・・・・・です。忘れていました。かさばるものとして このブログを作成している OS win 10 自作ミドルタワーのPCと24型LEDモニターです。
これらの修復作業によりジャンク品のオープンリールデッキが復活しました。目標である動態保存が可能となっています。
余談
左の画像は再生初段アンプ基板です。お遊びで回路設計しました。
再生イコライザー特性調査用として作成しました。ディスクリート トランジスター回路ではありません。オーディオプリアンプなどに多用された汎用低雑音オペアンプ NJM4558DD を使用したイコライザー回路です。このICは現在でもD/A変換回路・オーディオアンプなどに多用されており 現在では1個25円程度で入手できる安価な高性能のオペアンプです。トランジスターを使った回路よりも部品点数も少なく安定した設計が可能と思います。工作での再現性は良いと思います。
通常このようなオペアンプ回路であれば+・-2電源で動作させるのが一般的ですが 今回単電源 DC24V で動作するように実験してみました。
NAB特性カーブ図(対数グラフ図)を確認しましたが イコライザーでの利得変化量は約 36dB 程度あります。20Hzを0dB とすると 20KHz では-36dB となっています。利得調整回路はIC出力端子からIC -端子へフィードバック用C・R素子で構成されています。フィルター回路の設計と異なり 6dB/oct の特性が得られる うねりの少ないリニアリティーのよい回路です。帰還素子回路を分割し抵抗とコンデンサー並列接続で周波数特性を得ています。又半固定VR抵抗値変化でと時定数を変えることにより周波数特性を調整することができます。再生周波数特性調整用のVRが該当します。このデッキでは高域の時定数を調整します。
イコライザー回路はCR減衰型ではなく アクティブ回路のNFB型を採用しています。NFB型の特徴として 低域に比較して高域はNFB量が多くなり歪率は良くなります。信号レベルで考えると100倍(40dB)近く出力差が発生している回路と考察できます。
NABイコライザー特性
19cm/sec 低域 3180μ/sec 高域 50μ/sec
9.5cm/sec 低域 3180μ/sec 高域 90μ/sec
EEテープイコライザー特性
19cm/sec 低域 3180μ/sec 高域 35μ/sec
9.5cm/sec 低域 3180μ/sec 高域 50μ/sec
EEテープセレクターがある機種の場合は高域時定数3種類をテープスピード・テープ種により高域特性 35μ/sec,50μ/sec,90μ/sec と選択が必要です。低域は同じ 3180μ/sec です。
今回電子スイッチ回路で調整VR接続点の切り替えを実験しましたが 電子スイッチ・フォトカプラーで工作したため 歪率が多くなり使い物になりません。仕方なく従来と同じリレー接点切り替え回路に変更しています。手持ちに電子スイッチとして良好な動作できるものがなく トランジスター(半導体)スイッチ回路を断念しました。EEテープが使用できる機器ではほとんどイコライザー選択は電子スイッチが採用されています。
今回採用したIC内部には同じ回路が2組内蔵されています。ICを単電源で動作させるためにICの+・-端子には電源電圧の1/2の電圧をバイアス電圧として供給しなければ最良の動作とはなりません。増幅回路部オペアンプ +入力端子に高抵抗を通じて1/2VCC バイアス電圧を供給します。このバイアスにより正常動作時には各端子電圧は1/2VCC電圧となります。片側ユニットはバイアス発生回路 又片側は初段増幅イコライザー回路として動作します。各チャンネルセパレーションを考慮し1個のICで各チャンネル増幅回路と設計しておりません。
各ICの入・出力端子電圧は1/2VCC 電圧となるため ICの入・出力端子には直流分カット用カップリングコンデンサーを挿入しなければなりません。この回路ではOSコンデンサー・タンタルコンデンサーを採用しています。この初段の増幅回路にはカップリングコンデンサーとしてタンタルコンデンサー・ローリーク電解コンデンサーが多用されます。修理の場合 漏えい電流の多い 通常のCE電解コンデンサーを使用してはなりません。雑音源ともなりますので初段増幅回路修理にはカップリングコンデンサーも良質なものを選択しなければなりません。
今回修復した A-6300MkⅡでは再生初段アンプ基板はヘッドとの接続はRCA端子構造であり 今回作成した基板を接続し調整しましたが イコライザー基板として正常に動作するのが確認できました。古いデッキなどではこのような基板を使ってテストすれば回路の良否判断ができます。NAB特性調査用として作成した実験基板です。周波数変化による 入・出力電圧を対数グラフにプロットすればアンプの周波数特性が判明します。
無銭庵 仙人の独り言
今回修復したオープンリールテープデッキも骨董品を修復しましたが この時代よりもさらに時代が古くなると 終戦後70年余り経過しますが 当時の娯楽といえばラジオ放送の受信でした。テレビ放送すらありません。音楽鑑賞と言えば SP78回転レコード再生です。高々片面3分程度です。
お遊びで骨董品普及型5球スーパーラジオ を蘇生してみました。余興です。
真空管の配置は
周波数変換 Ut 6WC5
中間周波数増幅 UZ 6D6
:検波・低周波増幅 UZ 6ZDH3A
低周波電力増幅 UZ 6ZP1
電源整流 KX 80BK
一番スペックとしては程度の低い5球スーパーラジオの構成です。特に低周波電力増幅管UZ 6ZP1では1W以下の出力能力しかありません。貧弱な構成でした。
高級電蓄型のスーパーラジオでは 7本の真空管が使われています。低周波電力増幅管はUZ 42となり Hi-Fi 音とは言えませんが3W程度まで出力は増加しています。戦前の並3、並4ラジオ 電力増幅管 UX-12A 整流管 KX-12F マグネチックスピーカー搭載機に比べれば音質は向上しています。
違いは低周波増幅3段 UZ 6ZDH3A - UY 76 - UZ 42 のラインナップです。
電源回路は両波整流回路 KX 80
同調指示管 6E5
同調指示管は増幅回路ではありません。AVC 電圧で動作するアクセサリー的な真空管です。現在ではほとんど蛍光面の劣化により発光状態は良くありません。
電蓄では レコード演奏は78回転SP盤用であり鉄針を時々交換しての演奏です。ピックアップ内部には馬蹄形永久磁石が取り付けられており カートリッジの種類に分類すれば MI型 可動鉄片の発電構造です。畜針は鉄針でありフレーヤーボードには新品の畜針と消耗した畜針が収納できる皿が取り付けられていました。
このフォノモーターはダイレクトドライブモーター構造でした。回転スピードは回転子シャフトに取り付けられた板バネに取りつけられている振子(おもり)の位置調整でスピード制御していました。
その後78回転レコード盤が世の中からなくなると モーター部だけがターンテーブルシャフトに針金が取り付けられ その先にテープがついており テープがひらひらと動き 蠅(ハエ)を食品から遠ざける機械として食品販売店頭でよく見かけました。良き時代 ALWAYS 3丁目の夕日 時代であったと思います。
電気が必要でない 手巻き蓄音機ですとレコード盤最後までまともなスピードで回転するはずが スプリング(ぜんまい)の特性が悪く 演奏終り近くでは 回転数低下が発生すると 再度手巻き操作が必要な場合もありました。アンプがありませんので振動板から直接ホーン構造で音量を拡大していました。もちろん音量調整はありません。古い良き時代での話です。
電蓄では上記真空管構成でスピーカーは励磁型(フュールドコイル)8インチダイナミックスピーカーでした。卓上型電蓄では六半の励磁型スピーカーが搭載されていました。電蓄ラジオは当時ラジオ少年時代であり 7MHz-A3無線機工作のため分解してしまいました。実家を物色しましたが現在残骸も見当たりません。
昭和20年代終戦後 並3,4ラジオは 駐留していた米軍からスプリアス妨害の影響により 短波通信などに妨害が発生するため 5球スーパーラジオに変更するように押し付けられています。その当時の組み立てキットと思われる標準型 5球スーパーです。現在でも中波ラジオ放送は受信できます。
内部構造です。
当時の使われていた部品を観察すると現在供給されている部品とは精度・品質もよくなく 大型の部品ばかりです。
故障個所はやはりコンデンサーでした。現在の部品を使った代用品となればフィルムコンデンサーですがあまりにも近代的となり ペーパーコンデンサーは真空管式カラーテレビ時代のオイル・ペーパーコンデンサーに交換しました。といっても製造後50年近くのコンデンサーです。もちろん電解コンデンサーも不良となっており 中古品のブロック型電解コンデンサーに交換しました。現在このようなラジオ用ブロック電解コンデンサーは入手できません。
真空管はST管が使われていました。国産真空管製造技術も悪かったですが 何とか生きており現有品を使って動作するようにしました。固定抵抗は大きな抵抗値変化も少なく使える部品は極力再使用しています。
スピーカーは電磁石フィールドコイルの使っていないパーマネント・ダイナミック・スピーカーが搭載されています。通称六半のスピーカーです。出力トランスはスピーカーに取り付けられています。
励磁型のスピーカーはダイナミックスピーカーと呼ばれています。フィールドコイルはチョークコイルとして使用されており電磁磁気回路でスピーカーのボイスコイル・コーン紙を駆動しています。当時キン・キン音の8インチ・マグネチックスピーカーも世間には存在しました。学校などの放送用スピーカーです。放送用アンプは良くて UY-807 p-p 50W程度の出力でした。近代的なPAシステムに比べると貧弱なシステムです。
UY-807 といえば強固な真空管であったと記憶しています。7MHz帯 アンカバ JA10*** 無線機終段電力増幅管として工作した記憶があります。戦前日本でも軍隊・業務用途管として多用されたトップフレートST-16型ビーム4極管です。スリムなセラミックベース川西製 海軍マークの付いた UY-807A も所有していましたが 現在行方不明です。戦後は 2B33 として品番こそ変わりましたが高度成長時代の業務用途管となりました。
UY-807 は周波数の高い高周波用 無線機に使用するには限界があります。50MHz帯では効率がよくありません。 60MHz が限度でありその後は通信専用管 6146B(2B46,S-2001) などに席を譲っています。UY- 807 の規準管はメタル管の 6L6 です。ビーム4極管でその後類似管が多数製造されました。初期の真空管式白黒テレビの水平偏向管 6B-G6 足は8本USソケットに改良されています。真空管ステレオアンプではよく使用する管種は 6L6GC であり最大定格も大きくなりました。WE製であれば WE-350A,B が該当します。
同じく ST-16 型トッププレートの UY-807 同等管・軍用真空管 1625 です。ヒーターの電圧が異なり12.6V で動作します。UY-807 はソケットの足は5本ですが 1625 は足の数が7本です。この5球スーパーラジオに使用されている 6WC5 も同じ7本足ですがソケットの構造が異なります。
1625 をラージUT と呼ばれ 6WC5 はスモールUt と呼ばれます。ソケットの互換性はありません。
使用されていた だるま型 ST真空管と代用MT管
周波数変換管 6WC5
代用MT管 6B-E6
中間周波増幅管 6D6
代用MT管 6B-D6
検波・低周波増幅管 6ZDH3A
代用MT管 6A-V6
低周波電力増幅管 6ZP1
代用MT管 6A-R5
:
半波整流管 80BK
代用MT管 5M-K9
今回何とか初期から搭載されていたST管は使えましたので 代用MT管に変更せずに動作しています。
お遊びで真空管カラーテレビ用同調指示管を使って 6R-E13 を動作してみました。当時高級ラジオ・電蓄に使用されていた同調指示管は 6E5 です。発光面が2か所ある同調指示管は 6ZE1 です。

離調時の蛍光面発光状態
同調時の蛍光面発光状態
初期の真空管式テープレコーダーでは 今回修復したテープデッキのようなVUメーターは採用されておらず 同調指示管で録音レベル調整をしていました。蛍光面はほとんどの場合扇状であり オーバー録音時は一部分重なったところが明るく発光していました。VUメーターのように機械式表示ではなく 感度の良いピークメーター的な動作でした。
同調指示管 6Z-E1 を真空管試験機 DELICA 1001 型機で動作させてみました。6E5 では扇状の発光面は1か所ですが この 6Z-E1 では明るく発光しない部分が180度違いで2か所あります。
一応3極管構造ですので低周波増幅回路として使用は可能です。音声信号に同期して発光面変化が発生しますのでVUメーターの代用品としても面白いと思います。
修復作業に設置してある道楽部屋ステレオシステムは作成後50年近くなる真空管システムです。そのシステムのスピーカーは高能率であり このラジオと同じようなスピーカー P-610A シリーズ 2連 TW 追加しての動作です。容積90リットルのフロア型バスレフスピーカーです。
38同軸 ALTEC 612J は搭載スピーカーの大きさは15インチの大型であり 重量も50Kg を超えます。この道楽部屋には設置することができません。別室に 38FD 真空管式プリメインアンプとスピーカとはコンビて動作します。能率のよい大型スピーカーシステムは日本の狭い部屋では使い勝手が悪いと思います。やはり夜間のリスニングには6半程度のシングルコーンスピーカーが扱いやすいスピーカーシステムと思います。現代においては同等のスピーカーは見つからず入手困難なスピーカーシステムです。店頭では小型・スリムなスピーカーばかりです。所有している音響機器は骨董品ばかりですが現代のデジタル機器も音出しできる環境です。
お金さえ出せば近代的なオーディオシステムは入手可能ですが このような骨董品を実動させるようになるまでは 道楽作業では人件費は無視していますが 業者に修復依頼すれば高額な費用が請求されます。他人から見れば修復した機器は粗大ごみ・産業廃棄物と思われるかもしれません。
by musenan sennin
REV PLAY 時テープ走行不安定が発覚
![]() |
テープガイドローラー金具の追加 |
よく観察すると10号リールで リバース開始時 5~10分間ぐらいテープ走行が不安定動作が現認できました。
![]() |
メーカーでの対策状況 |
オークションサイトでA-6300シリーズを物色中 メーカーで不安定走行の対策した出品物を確認しました。ピンチローラーの右上にあるテープガイド金具が取り付けられており まさに悩んでいた症状回避策です。後付けの対策方法ですがこのような取り付け方はメーカーでないと加工・工作できないと思います。
メーカーでのテープ走行安定対策
キャプスタン軸カバーとテンションアーム取り付け部との間に対策金具が取り付けられており 中間にテープガイド金具が取り付けられています。簡単な写真では詳細は不明であり 金具かローラー方式かは判別できません。PCモニター画面の撮影であり見苦しい画像ですが概略は判明すると思います。この機種の左側テンションアームの構造はベアリング2個使ったローラー方式でありテープ走行摩擦の影響が発生しにくい構造です。それと同様の構造かもしれません。その後の機種ではベアリングを使ったテンションアーム構造は見受けられません。X-10R系では軸受けはメタル構造です。
今となってはメーカーからの対策部品入手困難です。仕方なくガイド金具を工作しました。材料としてジャンク品テープガイド金具を流用しようとしましたが部品抜き取り用 X-10R メカニズムから拝借しようとしましたが適当な形状ではありません。テンションアームローラーが適当であると思いましたが取り付け工作作業に問題があり断念。最終的には2mm 厚アルミ板を加工し 12mm直径の円盤を2枚切り出しました。テープガイド金具とはせずに ベアリングを使ったローラーでの工作です。マイクロベアリング 直径9mm ローラー部の幅は 6mm として インピーダンスローラーもどき としました。2枚の円盤間の距離はデジタルノギスを使い 6.5mm となるように調整します。旋盤がないため手作業での加工です。本体フロントパネルにM3タップねじを加工し ガイドローラーをM3 ×30L のねじで固定しました。固定するときには微妙な走行調整作業が発生します。高さ調整として0.1t~0.2t の自作調整用ワッシャーを数枚重ね合わせ挿入して走行調整をしています。又テンションアームとの段差調整作業も発生します。テープガイド金具としての材質はステンレススチールが望ましいのですが簡単には加工・工作はできません。加工の簡単なアルミ材を選択しました。
又極力テープ走行時の摩擦抵抗が発生しないようにテープガイドローラー取り付け位置を考慮しています。
![]() |
追加工作 テープガイドローラー |
A-6300系のデッキは多数販売されています。新品時には問題発生頻度が少なかったと思いますが ピンチローラーなどの経年劣化によりテープ走行不安定となったようです。
同等機能搭載分 A-4300 シリーズでは同様の症状が考えられますが 装着できるテープは7号リールまでであり 右側テンションアームは A-6300シリーズのように右側に傾いて動作することはないと思います。キャプスタン軸とテンションアームとの間隔が開かなければこのような走行不安定症状は発生しないと思います。
手作業によるテープガイドローラーの工作により リバース再生モードも正常に動作するようになり 気分的にも安心して使用できます。やはりメーカーでも問題対策をしていたようです。
画像のようにピンチローラーは製造後30年以上の生テープを使った場合 ピンチローラーの表面が汚れているのが確認できます。バックコート面が剥離し ピンチローラーが汚れますのでこのように古いテープを使う場合一度使えは走行系の清掃・メンテナンス作業が発生します。新品及び製造後古くないテープばかりを使用するのであればここまで走行系が汚れることはありません。高額となり販売されているテープ種は限定されますが 新品の生テープを使用することを推奨します。
オープンリールデッキを運用するにはメンテナンス作業は必ず発生します。
オープンリールデッキは誰でも簡単に扱える音響機器ではありません。
このようなオープンリールデッキの調整作業は 製造された時代でのテープにおいて 基準信号 400Hz 正弦波信号を録音した場合 磁気テープに記録される信号レベルを調整しています。前項目で記載しましたが 400Hz の信号 リファレンスレベル歪率1% の信号レベルを調整しています。
同じ録音レベルであっても 歪率は録音する生テープの種類により 磁気飽和点は異なっています。入力信号をVUメーターを監視しながら録音しますので 歪を少なく大きな信号で録音するための目安をメーターで監視しているわけです。取扱説明書では0VU を超えないように録音するように推奨されているはずです。メーター指針が0VU 以上になると録音される信号の歪が多くなるからです。現実には機械的なVUメーターではピーク的な大きな電圧は表示できず ある程度録音するテクニックが必要となるわけです。一部の機種にはピークメーター搭載品も存在します。
生テープに録音・再生されるレベル調整しているわけです。
![]() |
A-6300MkⅡ ヘッド配置 |
この修復作業をするのに基準となるテストテープまで作成してしまいました。記録信号はフルトラックです。校正済みの正規テストテープは入手が困難です。中古品のテストテープも入手しましたがレベル変動が発生しており真面に使えません。骨董品となると基準値を導き出すのに苦労します。別ブログにテストテープ作成過程も公開しています。修復作業の完成度は自己満足レベルです。
![]() |
調整完了まで仮固定してある OUTPUT VR |
各項目 調整・点検の結果 ほぼ初期性能が得られました。40年近くなるデッキですが音楽を録音テストとを兼ねて作成です。再生音には古さは感じられません。アンプが真空管でありスピーカーシステムも高能率で 95dB/m の音圧です。数Wの出力で家庭内であれば音量不足とはなりません。音楽のジャンルとしては幅広くオムニバス形式で録音しました。最近はやっている若者の好む音楽ではありませんが 当時の音楽がアナログ音源で再生されます。クラッシック・Jポップ・歌謡曲・演歌・JAZZ まで幅の広い長時間・聞きあきない独自の選別です。このおかげで快適なお昼寝ができます。
道楽部屋は修復した骨董品オーディオ機器・骨董品測定機器で足の踏み場所確保に困惑しています。当初からのステレオシステムは真空管システムです。以前 X-10R 系デッキを多数台修復し実働するようになりましたが デュアルキャプスタン構造における走行不安定な機器が発生し困惑していました。初心に戻り今回 A-6300系に手を出してしまいました。修復過程において設計思想の違いが判明します。今回修復したデッキは遊ぶには手軽な機器と思います。今しばらくは骨董品デッキでもってアナログ録音・再生ができ 暇つぶしの種ができました。オーディオにおいてもデジタルシステムが主流となりましたが アナログオーディオは現在でも捨てがたいジャンルです。このような修復作業は誰でもできる道楽作業ではありません。趣味の世界としては扱われる方は極少量の人達であると思います。記載した事項が多少とも参考になればと思い くだらないブログを立ち上げてしまいました。
現在道楽部屋にはかさばるオープンリールデッキが4台転がっています。その他の機器は別室と山小屋保管です。カラクタが増殖しています。転がっている機種名は TEAC X-10R 2台 SONY TC-707FC この修復している TEAC A-6300MkⅡ です。オープンリールテープ10号,7号,5号リールの生テープが段ボール箱に山積み保管していますのでどのような環境か ご想像ください。ラックには測定機器類・真空管システムと90リットルのバスレフ型スピーカー2台を含めると・・・・・・・です。忘れていました。かさばるものとして このブログを作成している OS win 10 自作ミドルタワーのPCと24型LEDモニターです。
これらの修復作業によりジャンク品のオープンリールデッキが復活しました。目標である動態保存が可能となっています。
余談
![]() |
実験用 再生初段アンプ イコライザー基板 |
再生イコライザー特性調査用として作成しました。ディスクリート トランジスター回路ではありません。オーディオプリアンプなどに多用された汎用低雑音オペアンプ NJM4558DD を使用したイコライザー回路です。このICは現在でもD/A変換回路・オーディオアンプなどに多用されており 現在では1個25円程度で入手できる安価な高性能のオペアンプです。トランジスターを使った回路よりも部品点数も少なく安定した設計が可能と思います。工作での再現性は良いと思います。
通常このようなオペアンプ回路であれば+・-2電源で動作させるのが一般的ですが 今回単電源 DC24V で動作するように実験してみました。
NAB特性カーブ図(対数グラフ図)を確認しましたが イコライザーでの利得変化量は約 36dB 程度あります。20Hzを0dB とすると 20KHz では-36dB となっています。利得調整回路はIC出力端子からIC -端子へフィードバック用C・R素子で構成されています。フィルター回路の設計と異なり 6dB/oct の特性が得られる うねりの少ないリニアリティーのよい回路です。帰還素子回路を分割し抵抗とコンデンサー並列接続で周波数特性を得ています。又半固定VR抵抗値変化でと時定数を変えることにより周波数特性を調整することができます。再生周波数特性調整用のVRが該当します。このデッキでは高域の時定数を調整します。
イコライザー回路はCR減衰型ではなく アクティブ回路のNFB型を採用しています。NFB型の特徴として 低域に比較して高域はNFB量が多くなり歪率は良くなります。信号レベルで考えると100倍(40dB)近く出力差が発生している回路と考察できます。
NABイコライザー特性
19cm/sec 低域 3180μ/sec 高域 50μ/sec
9.5cm/sec 低域 3180μ/sec 高域 90μ/sec
EEテープイコライザー特性
19cm/sec 低域 3180μ/sec 高域 35μ/sec
9.5cm/sec 低域 3180μ/sec 高域 50μ/sec
EEテープセレクターがある機種の場合は高域時定数3種類をテープスピード・テープ種により高域特性 35μ/sec,50μ/sec,90μ/sec と選択が必要です。低域は同じ 3180μ/sec です。
今回電子スイッチ回路で調整VR接続点の切り替えを実験しましたが 電子スイッチ・フォトカプラーで工作したため 歪率が多くなり使い物になりません。仕方なく従来と同じリレー接点切り替え回路に変更しています。手持ちに電子スイッチとして良好な動作できるものがなく トランジスター(半導体)スイッチ回路を断念しました。EEテープが使用できる機器ではほとんどイコライザー選択は電子スイッチが採用されています。
今回採用したIC内部には同じ回路が2組内蔵されています。ICを単電源で動作させるためにICの+・-端子には電源電圧の1/2の電圧をバイアス電圧として供給しなければ最良の動作とはなりません。増幅回路部オペアンプ +入力端子に高抵抗を通じて1/2VCC バイアス電圧を供給します。このバイアスにより正常動作時には各端子電圧は1/2VCC電圧となります。片側ユニットはバイアス発生回路 又片側は初段増幅イコライザー回路として動作します。各チャンネルセパレーションを考慮し1個のICで各チャンネル増幅回路と設計しておりません。
各ICの入・出力端子電圧は1/2VCC 電圧となるため ICの入・出力端子には直流分カット用カップリングコンデンサーを挿入しなければなりません。この回路ではOSコンデンサー・タンタルコンデンサーを採用しています。この初段の増幅回路にはカップリングコンデンサーとしてタンタルコンデンサー・ローリーク電解コンデンサーが多用されます。修理の場合 漏えい電流の多い 通常のCE電解コンデンサーを使用してはなりません。雑音源ともなりますので初段増幅回路修理にはカップリングコンデンサーも良質なものを選択しなければなりません。
今回修復した A-6300MkⅡでは再生初段アンプ基板はヘッドとの接続はRCA端子構造であり 今回作成した基板を接続し調整しましたが イコライザー基板として正常に動作するのが確認できました。古いデッキなどではこのような基板を使ってテストすれば回路の良否判断ができます。NAB特性調査用として作成した実験基板です。周波数変化による 入・出力電圧を対数グラフにプロットすればアンプの周波数特性が判明します。
無銭庵 仙人の独り言
今回修復したオープンリールテープデッキも骨董品を修復しましたが この時代よりもさらに時代が古くなると 終戦後70年余り経過しますが 当時の娯楽といえばラジオ放送の受信でした。テレビ放送すらありません。音楽鑑賞と言えば SP78回転レコード再生です。高々片面3分程度です。
お遊びで骨董品普及型5球スーパーラジオ を蘇生してみました。余興です。
真空管の配置は
周波数変換 Ut 6WC5
中間周波数増幅 UZ 6D6
:検波・低周波増幅 UZ 6ZDH3A
低周波電力増幅 UZ 6ZP1
電源整流 KX 80BK
![]() |
貧弱な半波整流管 KX-12F |
高級電蓄型のスーパーラジオでは 7本の真空管が使われています。低周波電力増幅管はUZ 42となり Hi-Fi 音とは言えませんが3W程度まで出力は増加しています。戦前の並3、並4ラジオ 電力増幅管 UX-12A 整流管 KX-12F マグネチックスピーカー搭載機に比べれば音質は向上しています。
違いは低周波増幅3段 UZ 6ZDH3A - UY 76 - UZ 42 のラインナップです。
電源回路は両波整流回路 KX 80
同調指示管 6E5
同調指示管は増幅回路ではありません。AVC 電圧で動作するアクセサリー的な真空管です。現在ではほとんど蛍光面の劣化により発光状態は良くありません。
![]() |
UZ-42 同等管 6F6-G 6F6 メタル管 |
電蓄では レコード演奏は78回転SP盤用であり鉄針を時々交換しての演奏です。ピックアップ内部には馬蹄形永久磁石が取り付けられており カートリッジの種類に分類すれば MI型 可動鉄片の発電構造です。畜針は鉄針でありフレーヤーボードには新品の畜針と消耗した畜針が収納できる皿が取り付けられていました。
このフォノモーターはダイレクトドライブモーター構造でした。回転スピードは回転子シャフトに取り付けられた板バネに取りつけられている振子(おもり)の位置調整でスピード制御していました。
その後78回転レコード盤が世の中からなくなると モーター部だけがターンテーブルシャフトに針金が取り付けられ その先にテープがついており テープがひらひらと動き 蠅(ハエ)を食品から遠ざける機械として食品販売店頭でよく見かけました。良き時代 ALWAYS 3丁目の夕日 時代であったと思います。
電気が必要でない 手巻き蓄音機ですとレコード盤最後までまともなスピードで回転するはずが スプリング(ぜんまい)の特性が悪く 演奏終り近くでは 回転数低下が発生すると 再度手巻き操作が必要な場合もありました。アンプがありませんので振動板から直接ホーン構造で音量を拡大していました。もちろん音量調整はありません。古い良き時代での話です。
電蓄では上記真空管構成でスピーカーは励磁型(フュールドコイル)8インチダイナミックスピーカーでした。卓上型電蓄では六半の励磁型スピーカーが搭載されていました。電蓄ラジオは当時ラジオ少年時代であり 7MHz-A3無線機工作のため分解してしまいました。実家を物色しましたが現在残骸も見当たりません。
昭和20年代終戦後 並3,4ラジオは 駐留していた米軍からスプリアス妨害の影響により 短波通信などに妨害が発生するため 5球スーパーラジオに変更するように押し付けられています。その当時の組み立てキットと思われる標準型 5球スーパーです。現在でも中波ラジオ放送は受信できます。
内部構造です。
当時の使われていた部品を観察すると現在供給されている部品とは精度・品質もよくなく 大型の部品ばかりです。
故障個所はやはりコンデンサーでした。現在の部品を使った代用品となればフィルムコンデンサーですがあまりにも近代的となり ペーパーコンデンサーは真空管式カラーテレビ時代のオイル・ペーパーコンデンサーに交換しました。といっても製造後50年近くのコンデンサーです。もちろん電解コンデンサーも不良となっており 中古品のブロック型電解コンデンサーに交換しました。現在このようなラジオ用ブロック電解コンデンサーは入手できません。
真空管はST管が使われていました。国産真空管製造技術も悪かったですが 何とか生きており現有品を使って動作するようにしました。固定抵抗は大きな抵抗値変化も少なく使える部品は極力再使用しています。
スピーカーは電磁石フィールドコイルの使っていないパーマネント・ダイナミック・スピーカーが搭載されています。通称六半のスピーカーです。出力トランスはスピーカーに取り付けられています。
励磁型のスピーカーはダイナミックスピーカーと呼ばれています。フィールドコイルはチョークコイルとして使用されており電磁磁気回路でスピーカーのボイスコイル・コーン紙を駆動しています。当時キン・キン音の8インチ・マグネチックスピーカーも世間には存在しました。学校などの放送用スピーカーです。放送用アンプは良くて UY-807 p-p 50W程度の出力でした。近代的なPAシステムに比べると貧弱なシステムです。
![]() |
東芝 UY-807 SYLVANIA 1625 |
UY-807 といえば強固な真空管であったと記憶しています。7MHz帯 アンカバ JA10*** 無線機終段電力増幅管として工作した記憶があります。戦前日本でも軍隊・業務用途管として多用されたトップフレートST-16型ビーム4極管です。スリムなセラミックベース川西製 海軍マークの付いた UY-807A も所有していましたが 現在行方不明です。戦後は 2B33 として品番こそ変わりましたが高度成長時代の業務用途管となりました。
UY-807 は周波数の高い高周波用 無線機に使用するには限界があります。50MHz帯では効率がよくありません。 60MHz が限度でありその後は通信専用管 6146B(2B46,S-2001) などに席を譲っています。UY- 807 の規準管はメタル管の 6L6 です。ビーム4極管でその後類似管が多数製造されました。初期の真空管式白黒テレビの水平偏向管 6B-G6 足は8本USソケットに改良されています。真空管ステレオアンプではよく使用する管種は 6L6GC であり最大定格も大きくなりました。WE製であれば WE-350A,B が該当します。
同じく ST-16 型トッププレートの UY-807 同等管・軍用真空管 1625 です。ヒーターの電圧が異なり12.6V で動作します。UY-807 はソケットの足は5本ですが 1625 は足の数が7本です。この5球スーパーラジオに使用されている 6WC5 も同じ7本足ですがソケットの構造が異なります。
1625 をラージUT と呼ばれ 6WC5 はスモールUt と呼ばれます。ソケットの互換性はありません。
使用されていた だるま型 ST真空管と代用MT管
![]() |
6WC5, 6B-E6 |
周波数変換管 6WC5
代用MT管 6B-E6
![]() |
6D6, 6B-D6 |
中間周波増幅管 6D6
代用MT管 6B-D6
![]() |
6ZDH3A, 6A-V6 |
検波・低周波増幅管 6ZDH3A
代用MT管 6A-V6
![]() |
6ZP1, 6A-R5 |
低周波電力増幅管 6ZP1
代用MT管 6A-R5
:
![]() |
80BK, 5M-K9 |
半波整流管 80BK
代用MT管 5M-K9
今回何とか初期から搭載されていたST管は使えましたので 代用MT管に変更せずに動作しています。
お遊びで真空管カラーテレビ用同調指示管を使って 6R-E13 を動作してみました。当時高級ラジオ・電蓄に使用されていた同調指示管は 6E5 です。発光面が2か所ある同調指示管は 6ZE1 です。

離調時の蛍光面発光状態
同調時の蛍光面発光状態
![]() |
同調指示管 6Z-E1 |
初期の真空管式テープレコーダーでは 今回修復したテープデッキのようなVUメーターは採用されておらず 同調指示管で録音レベル調整をしていました。蛍光面はほとんどの場合扇状であり オーバー録音時は一部分重なったところが明るく発光していました。VUメーターのように機械式表示ではなく 感度の良いピークメーター的な動作でした。
![]() |
6Z-E1 発光動作試験 |
同調指示管 6Z-E1 を真空管試験機 DELICA 1001 型機で動作させてみました。6E5 では扇状の発光面は1か所ですが この 6Z-E1 では明るく発光しない部分が180度違いで2か所あります。
一応3極管構造ですので低周波増幅回路として使用は可能です。音声信号に同期して発光面変化が発生しますのでVUメーターの代用品としても面白いと思います。
修復作業に設置してある道楽部屋ステレオシステムは作成後50年近くなる真空管システムです。そのシステムのスピーカーは高能率であり このラジオと同じようなスピーカー P-610A シリーズ 2連 TW 追加しての動作です。容積90リットルのフロア型バスレフスピーカーです。
38同軸 ALTEC 612J は搭載スピーカーの大きさは15インチの大型であり 重量も50Kg を超えます。この道楽部屋には設置することができません。別室に 38FD 真空管式プリメインアンプとスピーカとはコンビて動作します。能率のよい大型スピーカーシステムは日本の狭い部屋では使い勝手が悪いと思います。やはり夜間のリスニングには6半程度のシングルコーンスピーカーが扱いやすいスピーカーシステムと思います。現代においては同等のスピーカーは見つからず入手困難なスピーカーシステムです。店頭では小型・スリムなスピーカーばかりです。所有している音響機器は骨董品ばかりですが現代のデジタル機器も音出しできる環境です。
お金さえ出せば近代的なオーディオシステムは入手可能ですが このような骨董品を実動させるようになるまでは 道楽作業では人件費は無視していますが 業者に修復依頼すれば高額な費用が請求されます。他人から見れば修復した機器は粗大ごみ・産業廃棄物と思われるかもしれません。
これらが趣味の世界 道楽です。他人には押しつけはしません。自己満足の世界です。
自分には、修理する技術も知識もありませんが、同年配(か先輩)のマニアが奮戦する姿に感動しました。60Hz地区にお住いのようですが(当方50)お会いしたい話を聞かせていただきたい、そんな気持ちになりました。
返信削除